標記の著書についての書評である。本書は、ドーキンズの『利己的な遺伝子』を念頭に置き、人間には本来、利他的になる、共感する脳のしくみが備わっており、何がそれを妨げ、何がそれを機能させるかを説いた。本書は、どこまでも人間が「利他的脳」を持った、基本的には利他的な存在であることを強調し、利他性を育て強化する方法、利他性を阻む生理的・環境的要因を弱める具体的な提言をしている。世界のありようを見れば、これは楽観的過ぎるかもしれないが、著者が主張するように、自分の本質は利他であり、他者も同様であるということを認識し、信じることができれば、そして、仮に他者を害する傾向が強まる兆しがあったとしてもそれを早期に抑制し、利他的脳を強化する教育をしていけば、信頼が信頼を生む好循環に持っ
ていけるかもしれない。こそが、世界が滅びないための解決になるのではないか、という見解を述べた。